対談集
Water talk

「地域とともに人とともに」

九重町 日野康志 町長 × マザーウォーター 本井晃一 社長 対談

豊かな森林で育まれているマザーウォーターの水。日本の貴重な水源を守り、人々に清らかな美味しい水を届け続けるため、行政とも協同しています。
そのひとつに、大分県九重町があります。人口8,000人ほどの町で、九州の一大水源です。24年続いた前任者からバトンを受け、地域を大切にしながら新しいことにも積極的に取り組みたいと考える日野町長が着目したのは、「地元での雇用」と本井社長の「独自の考え」でした。

取材日時:2021.12.7

日野町長:
「水源林造林協議会」というのがありましてですね、水の涵養であったり、二酸化炭素の吸収であったりに向けて、水源林を整備する組織が全国にあって、いま私が九州の副会長をさせていただいています。

本井社長
九重町は九州の一大水源。いま問題になっている「ウッドショック」、木材の不足や価格高騰ですけれども、山の木を無計画に伐採して、土砂が流れてしまう災害が起きてしまっている状態です。日野町長が担っていらっしゃる協議会の活動には、森林の維持整備があるんですよね。

日野町長:
水は森林で循環して育まれるものなので。木を切るのであれば、植林をする、その繰り返しが必要ですよね。水源の「根もと」、水のもとになるところ、そこに涵養機能がないといい水は育たないので。自然に養われて育った水を、私たちは生活の中で一番必要なものとして享受させてもらっています。そのことを忘れたらいかんですよね。水は大事ですよ。

本井社長
水の大切さを一番理解いただいている町長なんですよ。僕らがマザーウォーターを立ち上げたベースも水を守り続けたいというところにあるので、企業としてはこれからの部分もありますけど、今後も仲良くさせていただきたいなと思っています。

日野町長:
本井社長とね、九重町で事業をやるかどうかの話をしたとき、事業内容についての話ももちろん耳を傾けていたんですけど、まずは対面での話しぶりや視線から「この人は信頼できる」と感じたことを覚えています。やっぱりね、信頼というのは、何をするにしても一番大事なものだと思っているんで。あとは、町長としては、九重町の人がその企業で働くことが重要だと考えていましたね。

本井社長
「雇用は、地元の方を」ということを第一に掲げて、2019年にスタートしましたね。

日野町長:
土地に根差していくためにも、仕事として関わる地域の人がいた方がいいと思っています。当時九重町には、3年くらい仕事がない中、何とか地元で働きたいという強い希望をもった方々がいらっしゃいました。その方たちが楽しく過ごせているようなのでありがたいですね。

本井社長
皆さん東京とのやり取りも問題ないですし、いろいろと助けていただいています。

日野町長:
地域の中で事業を育てるためには、地域の人がその中に入っていくことが必須です。地域には、やはりそれを生み育ててきた長い歴史があるんで、「地元の視点」を大事にしたいですね。一方で、それはひとつのベースであって、そこに新たなものが加わらないと成長はしないと考えています。「これはこういうものだ」という固定観念があると、そこで止まってしまう。本井社長は独自の考えをもっていらっしゃるじゃないですか。例えば290mlのペットボトルをラベルにして、とか、ラベルを会社のPRに使えるように、とか。そういう発想をもっている人との協同は、九重町にとってもいい影響を及ぼすんじゃないかと思ったんですよ。本井社長は、いろんなところを見て、自身で自分の考えや心を育てている人なんだなということをお会いしたときから強く感じていますから。

本井社長
ありがたいことです。

日野町長:
実は、ほかにも九重町で事業をしたいという会社は複数あったんです。ただ話を聞くと、会社の利益獲得が前面に出ていることが多いんですよね。もちろん、会社だから当然ではあるんですが。でもまぁ、正直面白くないわけです。九重町を一企業が利用するだけになってしまう。それよりは町長として、町側にとってもプラスになるような企業であって欲しい。企業は町側の想いも受けた上で、利益を出せるようになって欲しい。企業だけが良ければいい、あるいは九重町だけが良ければいい、ではなく、信頼感をもってお互いの目指す方向に向かうという関係がいいなと。信頼感があることによって、それぞれの力もより発揮できると思うんです。信頼の根っこがしっかりあって、取り組みの木が育っていくような、そんな関係がいいですね。

本井社長
僕たちってこう、まだそう大きい会社じゃないから、なかなか行動も限られていて。地元の方の雇用を守るということと、小ロット製造という工場のサイズ感について事業イメージをしっかりお伝えさせていただいて。町長と関係を築けたことがきっかけで、地元の銀行さんや観光協会さんともつながることができました。

日野町長:
私とは違う発想を持っている若い世代と本井社長を結び付けたらいいかな、と思って紹介しようと考えていたら、もうつながっていて驚きました。つながりを大切にして、自分で動ける社長だから、人はついていくと思いますし、マザーウォーターが会社として成長することも期待しています。

本井社長
いまだに一人も辞めたことがない会社、というのが実は自慢で。

日野町長:
人が育たない限りは、産業は発展しないんです。原点は全部「人」なんです。そして企業や地域が育っていくためには「現場」が重要なんです。私はこう思います。九重町には自然が豊富にあって、「自然と人」というのが大きなテーマになっています。ただ、人口減少を前に「持続可能なまち」についてしっかり考えていくこと。現在の若い人たち、将来の若い人たちにつながるまちづくりを着実にやっていけるような土台を作っておかないといけない、と町長として感じています。

本井社長
お会いしていただけて、こういうお話もできる町長。工場で「今から町長さんに会いに行ってきますね」と言うと、「そんな気軽に会えるんですか」と最初は驚かれました。気軽とは思っていないんですが、地域でお仕事させていただいている以上、報告はまめにしたいなと考えて訪問させていただいています。ノーアポイントでも2-3分お話しいただけて、いつもあたたかく迎え入れてくださっています。

日野町長:
町長だからと自分の役職を笠に着て、上から見るのは大っ嫌いで。私は以前デパート勤務や自動車備品の工場をやっていたんですが、現場のことをよく知っておくこと、対話をするということが重要だと痛感しまして。現場第一と対話を大事に仕事したいんです。本井社長は、その大事さを分かっていますね。いい出会いですよ、本当にそう思っています。

本井社長
ありがとうございます。

日野町長:
本井社長に期待することはいっぱいありますけど、引き続き現場に根付いた社長として活躍していただきたい。九重町が拠点として協力できることや助言できること、県との結び付きも含め、理想に向かって一緒に努力していきたいと思っています。

本井社長
水源のまち九重から。いろいろと心に留めさせていただきます。ありがとうございました。

クリタのうまい水
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